アニマル・レベリオンの思想

最終更新:2022年9月14日


アニマル・レベリオン(Animal Rebellion)という活動集団が物議をかもしていることを知った。ウェブサイトの情報によると、イギリスに本拠を置くアニマル・レベリオンは、直接行動を用いて動物性食品産業の妨害を行なう新しい集団であり、牛乳供給の阻止などに成功しているとのことである。が、日本のソーシャルメディアではその違法性を伴う活動のみが断片的に伝えられ、相も変わらずビーガンと動物の権利運動を貶める材料とされているらしい。こうしたことは以前からあったのでもはや驚きはしないが、行動の動機にも迫らず1~2分の切り抜き映像のみで他人の取り組みを評価するのは、相手が誰であれ、およそ公正で理知的な態度とはいえない。同集団の行動をいかに評価するかはさておき、まずは相手の考え方を正しく理解するのが先決だろう。調べてみると、ソーシャルメディアで言われていることとは違い、アニマル・レベリオンは動物の権利擁護を中心に据える集団ではなく、環境保護の目標を中心に掲げる集団だった(より正確なことは母体集団エクスティンクション・レベリオンの思想とも照らし合わせながら検証しなければならないが、ここでは省略する)。シーシェパードをめぐる議論などにもいえるが、環境保護と動物擁護の安易な混同は日本の残念な伝統である。こうした点も含め、余計な混乱に陥らない議論を進めていくための一助として、以下にアニマル・レベリオンのウェブサイトより、その行動背景を論じた記事(2022年9月13日アクセス)を全訳掲載することとした。多くの方に参照していただければ幸いである。

※ 以下、〔 〕は訳注。



私たちが牛乳供給を妨害する理由

――気候危機は全てを変える――



現在、あなたと同じような何百もの人々が、不安を抱き何かをしたいという思いから、傍観をやめ、自身の価値観にしたがって行動を起こしている。

かれらは犠牲を支払っている。自分の時間、自由、さらには社会的地位まで。かれらは多くを危険にさらしている。なぜか。

立ち上がって世界に変化を起こした者たちの一員となりたいからである。気候と自然の危機は全てを変えるからである。みずからの行動が正しいことを知っているからである。

そしてそれによる感覚のゆえでもある。自身の価値観にしたがって行動することは調和の感覚を伴う。分裂感、フラストレーション、不安、絶望ではなく。この人々は現在、みずからの考えと振る舞いを統合しようとしている。統合された振る舞いとは、自身の生活がフラストレーションや恐怖の金縛りに囚われず、有意義な決定と参与に満たされていることをいう。

あなたは私たちの戦術や行動時期に賛同できることもできないこともあるだろう。私たちの決定を基礎づける膨大な科学的事実を完全には飲み込めていないかもしれない。が、あなたに私たちの思いを語ることはできない。行動する者だけがそれを知っている。



気候危機――私たちが全てを変えなければならない理由

「今後2、3年で私たちが何をするかが、人類の未来を決すると思われてなりません。」
――サー・デビッド・キング、元イギリス政府主席科学アドバイザー、気候修復センター創設者


この夏、ヨーロッパは過去500年で最大の旱魃に見舞われている。パキスタンでは国土の3分の1がモンスーンの豪雨で水没している。自然火災はここイギリスを含め、世界中を覆い尽くした。食料・水供給のインフラ投資が何十年もないがしろにされてきた結果、私たちはこの惨事と向き合うには嘆かわしいほど備えが足りない。かたや企業の株主らは儲けによって億万長者になり上がった。

これは気候の不安定化を示すきざしに過ぎない。最悪の事態――その極めつけ――はこれからである。

科学的見解によれば、私たちが現在の軌道を歩み続けると2040年までに以下のことが起こる。

  • 野外の猛暑だけで年間数千万人が命を落とす。
  • 旱魃によって年間7億人以上が影響を受ける。
  • スコットランドのほか、世界中の島国や沿岸地域が海に沈む。
  • アフリカ・中東・熱帯の諸地域は「湿球効果」〔湿度の高い環境で発汗が妨げられ、人体が極度に熱される効果〕によって全く居住できなくなるおそれがあり、世界人口の40%が移住を余儀なくされる。

2050年までに気候難民は10~30億人に達し、苦しみと死が広がると予想される。資源をめぐる戦争と、死と苦しみが生じるのに加え、オーストラリアの気候科学者ウィル・ステッフェンが述べたように、「文明崩壊が最も考えやすい結末となる」。



私たちが食品システムの変革に注力する理由

というわけで、これは全てを変える。しかし最も大きく変わるのは、食品システムの見直しが何としても必要になるという点である。それによってこのシステムを、今既に起こっている気候危機に耐えられるだけの丈夫なものとしなければならない。

王立国際問題研究所の最新版・気候リスク評価によると、世界の食料生産拠点(作物の大部分が育てられる、いわゆる「世界のパンかご」)は、現在のままでは50%の確率で破産を迎えるという。具体的には、世界の主要な穀倉地帯――アメリカ、アジア、ウクライナのそれ――が2040年までに同時的な不作に見舞われる。大規模な飢餓が生じるのは疑えない。

私たちはこれがどのようなことか、ロシアのウクライナ侵攻を通して既に経験している。これはガス争奪戦争や化石燃料飢饉に引き裂かれた世界で起こることの予行演習といってよい。

世界で畜産利用される560億頭の陸生動物らが地球上の全作物の3分の1以上を平らげ、いわんや何十億尾もの養殖魚までが飼養される中、今日の動物性食品システムが気候危機を乗り越えられないことは誰の目にも明らかである。

これは全くもって持続不可能なシステムというよりない。白い紙きれを渡せば、いまや政治家・政策決定者・農家の誰一人として、動物ベースの食品システムを構想することなどありえないだろう。私たちが有する《唯一の》選択肢、与えられた唯一の真に持続可能な食品システムは、植物ベースのそれである。



ゆえに私たちは植物ベースの未来を要求する

目下、気候崩壊を喰い止めるべく全国の牛乳配給拠点やスーパーマーケットで行動を起こしている数百の人々は、2つの要求を持っている。

  1. イギリス政府は植物ベースの食品システムに移行する緊急課題の一環として、農家と漁業コミュニティが畜産・水産業から撤退するための支援を行なうこと。
  2. イギリス政府はより大きな野生回復・炭素削減プログラムの一環として、自由になった土地と海洋の再野生化に取り組むこと。

私たちはおかしな噂にしたがって行動することを政府に求めているのではない。政府は既に来たるべき事態を知っている。COP26の直前に当時の総理大臣ボリス・ジョンソンは述べた。

私たちは前代未聞の規模となる砂漠化・旱魃・不作・人々の大移動を目のあたりにするでしょう。それは不測の自然現象や自然災害のせいではなく、私たちのせいで、私たちが今行なっていることのせいで起こるのです。
そして孫の世代は私たちが元凶であること、しかも……私たちが警告を受けていたことを知るでしょう。のみならず、子孫のために声を上げて行動すべく舞台の中央に立ったのが私たちの代であったこと、にもかかわらず私たちが出番を知らせる合図を見逃したことを知るでしょう。そして問うのです――かくも利己的で近視眼的だったこの世代は、一体どんな人間たちだったのか、と。
今こそ人類が成長する時です。

しかしこの国の政府も世界各国の政府も、気候危機を喰い止める措置を何ら講じない。新たな総理のリズ・トラスはさらなる石油掘削を公約に掲げている。この首脳部の怠慢は死刑宣告に等しい。同じ怠慢が生活の危機という代償をもたらしてきた。政治家たちは前もって警告されながら行動しようとはしないのである。

国連事務総長のアントニオ・グテーレスは、「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の最新報告書が発刊された後、私たちの救いようもない怠慢についてこう語った。

陪審は評決を下しました。そして結論は有罪です。このIPCCによる報告書は気候に関する約束不履行の長い記録です。恥のファイルです。私たちを頑なに住めない世界へと向かわせた空しい誓いのカタログです。

多くのCOPで諸国の賛同を得た取り組みが(案の定)履行されなければ、4度の気温上昇が起こりかねない。忘れてはならないが、現在既に目の当たりにしている災難の全ては、たった1.2度の気温上昇で生じているのである。

いずれにせよ、私たちは北極の氷河融解なり、アマゾンや北方の森の死滅なりといった重大な臨界点を超える見通しであり、そうなれば指数的に膨らむ制御の効かない悪循環の連鎖が起こって、居住不能の「温室地球」ができあがってしまう。

では私たちに何ができるのか。できるのは調和を感じられる行ない、行動と価値観の統合である。



植物ベースの未来は気候危機解決の鍵

2019年、史上初めて、IPCCに属する世界屈指の気候科学者らと、「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム」(IPBES)に属する世界有数の生物多様性の研究者らが一堂に集い、私たちの子孫、愛する人々、および地球に暮らす他の住民たち、すなわち愛する動物たちに未来を保証すべく、私たちにできる最善のことは何かを論じ合った。

科学者たちが探し求めたのは、気候と自然のどちらかを悪化させることなく、双方のために機能する解決策だった。なんとなれば、どちらの悪化も私たちの将来の生存を物理的に脅かすからである。

報告書の結論いわく、私たちにできる最も重要な取り組みは「自然にもとづく解決策」の実施、つまりは土地と海洋生態系の再野生化である。

これは森林・湿地・泥炭地・自然の草原・河川・海洋の再生を意味する。野生生物の回帰、ならびに狐やハリネズミ、アナグマ、野生フクロウ、その他の素晴らしい野生生物の再繁栄を認めることである。

そして重要なことに、これを実行すれば大気中の二酸化炭素は大幅に減らせる。森林をはじめとする健全で豊かな生態系は大量の二酸化炭素を吸収するからである。荒廃を防ぐためにこれは何としても欠かせない。その炭素削減効果は極めて大きく、何と過去16年に化石燃料から生じた炭素をこれによって吸収できるほどである!

しかし。科学者らはこうも述べた――これを妨げている主要因は畜産業と漁業である、と。

これが今週、私たちを行動に駆り立てる理由にほかならない。このゆえに私たちは畜産業と漁業の終わりを求め、農家をこの破壊的産業から転向させるよう、政府に巨額の支援を要請している。

漁業が前進を阻むのは、何兆もの海洋動物を海から強奪しているかぎり、この産業は生態系を破壊するからである。私たちは魚のいない海をつくりつつある。

畜産業も前進を阻む。畜産業は地球上で最も土地を浪費する産業である! 農業と環境の関係を調べたこれまでで最大規模の研究を通し、4万戸の農場を調べたオクスフォード大学は、畜産業をなくせば世界の農地は76%削減できることを突き止めた(オーストラリア、中国、ヨーロッパ、アメリカを合わせた面積に相当)。

ハーバード大学の研究が示したところでは、イギリスで畜産業をなくした場合、イギリス在住者の食料を完全に保証しながら正味の炭素排出量をマイナスに転じられる。

これは私たちの行動基盤となる大きな科学的事実である。それゆえに私たちは愛する全てのものの名において、すなわち互いと、自然と、地球の名において行動する時、統合と連帯と調和を感じる。

私たちの構想は多言を要さない。農場が存在するところには森林が存在しうる。

これは人類の未来への展望である。自然の復権と再生、そして再野生化へ向かう美しい展望である。自然を愛さない者がいるだろうか。これは人々の望む最も好ましい解決策に違いない。ただし、その行方は人々が手放しがたいと感じる一つのことに懸かっている――動物性食品への嗜好である。

しかし私たちはどちらをより愛するのか。自分の食欲か、それとも安全で安心できる実り多い生活世界か。



農家はどうするか

農家は世界各国でもイギリスでも、まことに苦しい生活を送っている。低賃金、巨額の借金、かさむ費用、極端な天候、出荷額の低下、悪条件の取引、先行き不安な補助金制度、精神的健康の危機、全てが問題となる。

畜産業、特に酪農業は大きな妨害に直面している。精密醗酵などの新技術は急速に状況を変えつつある。遠くない将来、精密醗酵施設の肉や乳製品はより安く、衛生的で、環境に良く、栄養面で優れたものとなるだろう。それはいわば「ビヨンド・インポッシブル」〔不可能の向こう側〕ではない!

だからこそ私たちの活動は政府に対し、農業・漁業コミュニティに投資をして動物飼養からの移行を手助けするよう求めている。農家に生活賃金を与え、その土地で持続可能な果実・野菜・穀物栽培に従事することを促すように、と。また、自由になった土地を再野生化し、加えて太陽光農業や風力農業などの持続可能な土地利用の数々を実施するように、と。

周知の通り、イギリスでは杜撰な政策のせいで園芸が廃れた。他方、この国では遥かに小さな土地でより多くのナッツ・シード・果物・小麦ほか、人々の食べたい良質な品々をつくれることも分かっている。園芸は食物をつくる最も効率的な方法の一つに数えられる。

そこで私たちの活動は政府に対し、農家への投資と事業移行支援を行なって、かれらが昔からのなりわいを続けられるよう、そのサポートをせよと求めている。農家のなりわいとはすなわち、誇りをもって人々を養うことである。

そしてそれゆえに、私たちの活動では農家の啓蒙も行なう。現在、人々は道路やスーパーマーケットでの座り込みだけでなく、国内を回って農家と話し、尊重ある対話と傾聴を創出するなどの活動を行なっている。これが全てを変えるというのは、文字通りの意味である。農家と話す人々は自身の行動と信念を一致させている。そしてそれに調和を感じている。



ではなぜ妨害活動をするのか

人類の未来を決するまでに残された期間は3年である。政府は金と権力を持つ者たちの投資と圧力のもとに腐敗し、行動を怠っている。

民主主義は破綻している。妨害活動をせずに変化を起こす道があるなら、私たちはそれを選ぶ。が、妨害なしの気長なプロセスが機能しないのは明らかである。それが機能するならば、崩れかかった国民保健サービスも、化石燃料企業による選挙票の買収も、富裕層が操るメディアも、巨額を投じる銀行救済も、イラク戦争もない。かといって選挙に立候補することもできない。この国の破綻した単純小選挙区制は新しいものの到来を全て妨げるからである。

ゆえに私たちは妨害を行なう。みずからの生命が懸かっているからである。スーパーマーケットや乳製品の配送センターにいる人々だけではない。あなたの生命も懸かっている――今すぐあなたが事態に応じようと応じなかろうと。ならば私たちと行動してみてはどうだろうか。この行動は正当化される。非暴力の市民的抵抗に従事する一般庶民の運動は盛り上がっている! 私たちは非暴力を厳格に守り、市民的不服従の訓練を受け、くだんの破滅的未来を阻止するために何度でも逮捕される覚悟でいる。



私たちの仲間になって変化を起こそう

現在、あなたと同じような何百もの人々が、不安を抱き何かをしたいという思いから、傍観をやめ、自身の価値観にしたがって行動を起こしている(もっとも、その不安を感じるのは構わない。むしろそれは私たちの多くを行動へと向かわせる)。

かれらは犠牲を支払っている。自分の時間、自由、さらには社会的地位まで。かれらは多くを危険にさらしている。なぜか。

あなたは理由を知っている――安全な未来、植物ベースの未来のためである。

これは全てを変える。だから、あなたの価値観にしたがって行動しよう。仲間になってほしい。




ペンと非暴力

翻訳家・井上太一のホームページ

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